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白内障手術の際に挿入する眼内レンズには、大きく分けて単焦点眼内レンズと多焦点眼内レンズがあります。
一般的には、単焦点の眼内レンズを使用します。単焦点眼内レンズは、ピントの合う点が1点のみになるため、遠方にピントを合わせると、近くのピントが合わないために老眼鏡が必要になります。逆にピントを近くに合わせると、遠くを見るときにメガネが必要になります。
遠くも近くも見たいという希望をかなえる為に登場したのが、多焦点眼内レンズです。しかし、多焦点眼内レンズは全ての方が満足できるわけではありません。レンズにも特性がありますので、まずそれを理解して頂きたいと思います。
当院で手術を受けられる方には、まずは検査を受けていただき、その結果をもとに院長とよくご相談いただいた上で、ご自身に一番合うと思われるレンズをご選択頂くようにしております。
当院では、選定療養及び自由診療での多焦点レンズの手術を行なっています。
選定療養と自由診療では、使用できる眼内レンズの種類が異なります。自由診療では、5焦点もあるレンズが使用出来たり、強度近視の方など選定療養では製造していない範囲の度数も選ぶことが出来ます。
選定療養による多焦点レンズの手術では、手術にかかる費用は単焦点レンズと同じく健康保険適応となりますが、多焦点レンズにかかる代金は別途自己負担となります。
多焦点レンズの種類は従来通り「二焦点レンズ」と「三焦点レンズ」を選択でき、いずれも国内認可された多焦点レンズに限られます。自由診療では、手術費用及び術後3ヶ月の検査代、診察代は含まれた金額となります。
ある1点の距離に焦点を合わせた眼内レンズです。
手元のスマートフォンと机の上のパソコンを見るためには眼鏡が必要です。(遠くに焦点をあわせた場合)
ある2点の距離に焦点を合わせた眼内レンズです。
手元のスマートフォンと奥のテレビを見る分には眼鏡を使わずにすみます。(近くと遠くに焦点をあわせた場合)
ある3点の距離に焦点を合わせた眼内レンズです。
手元のスマートフォンと奥のテレビ、さらにその間にあるパソコンも眼鏡を使わずに見ることができます。
※写真はシミュレーションイメージです。術後の見え方には個人差があります。
※2焦点レンズ及び3焦点自然視覚レンズは2つ、もしくは3つの焦点距離にあるものを、同時にクリアにみられますが、焦点距離のものであっても、単焦点レンズほどクリアな視界は得られません。また、強い光を眩しく感じることがあります。
※焦点があっているところでも、場合によっては眼鏡が必要なことがあります。
ジョンソンアンドジョンソンが販売しています。2018年に海外で発売され、国内では、2019年に厚生労働省の認可を受けています。
2焦点回折型と焦点深度拡張型(EDOF)を組み合わせた連続焦点型の眼内レンズです。焦点距離による見え方の差を抑え、遠方から近方まで連続して自然な見え方が可能で、幅広い範囲をカバーできるのが特徴です。 暗所でもコントラス感度(見え方の質)が落ちにくいと言われています。
また多焦点で重要である近方は、約35cmまで見えるのも優位な点です。
デメリットは、ハロー・グレアが多少出ることになります。
Pan Optix(パンオプティクス)は回折型の3焦点眼内レンズです。
読書やスマートフォン使用などに適した「近方(40センチ)」、パソコンや料理などに適した「中間(60センチ)」、テレビ視聴や運転、ゴルフなどのスポーツに適した「遠方(5m以遠)」にピントが合うように設計 されています。
国内で初めて承認を受けた3焦点眼内レンズです。新たなクラレオン素材の採用によって、過去の素材の懸念点であったグリスニング(レンズが混濁して視力に影響を及ぼす現象)の心配が殆どなくなりました。
遠方、中間(60cm)、近方(40cm)にピントが合い、幅広い距離をカバーできるため、日常生活においてほとんどメガネやコンタクトレンズを必要としません。術後9ヶ月~12ヶ月の患者58名を対照にした海外の調査で、94.8%の患者様が術後に眼鏡が不要になったと回答した報告もあります。
また、瞳孔径(目の大きさ)が大きくなるほど遠方への光を配分が大きくなるように設計されており、ハロー・グレアを抑える工夫が為されています。
実生活に即したバランスの良いレンズです。レンズの形状から安定性が高く、乱視のかなり強い方にも適応が可能です。強度の乱視となると、製造していないレンズが多く、そのような際には非常に有用です。
Clareon Vivity(クラレオン ビビティ)は、2023年に厚生労働省から認可された波面制御型焦点深度拡張レンズです。遠方から中間までの距離を切れ目なく見れること、コントラス感度(見え方の質)において単焦点眼内レンズに遜色のない自然な見え方が可能
しかし、多焦点としては非常に重要である近方の見え方はあまり良くなく、近くを見る際には老眼鏡が必要となることが多いのが注意点です。その為、このレンズを基本的にはお勧めはしておりません。
インテンシティ(INTENSITEY)は、イスラエルのHanita Lenses社が製造した眼内レンズです。最大の特徴として、5つの焦点(遠方、遠中、中間、中近、近方)にピントを合わせることができる5焦点眼内レンズです。2019年にヨーロッパで「CEマーク」を取得し、日本では2020年9月より、取り扱いが開始されました。
5焦点にピント調整ができることは、このレンズの最大の特徴です。通常多くは3焦点であるからです。従来の回折型3焦点眼内レンズでは見えにくかった遠方~中間、中間~近方の距離にも焦点を合わせることができるようになりました。その為、ある程度連続的に見えるようになり、焦点間の視力の落ち込みが少ないのが利点です。
レンズの構造上、ハロー・グレアが少ない作りになっております。夜間の運転や外出が多い患者さんにも適しています。
光効率の最適化によって、光エネルギーのロスが6.5%と他の眼内レンズと比較しても少なく、効率よく眼内に光を取り入れることができるようになっています。また、光が瞳孔径に応じて最適配分されるように設計されています。
従来の多焦点眼内は、夜間に視力が落ち込むことがありました。
暗いところでは瞳孔径(黒目の大きさ)が変わってしまうため、多焦点眼内レンズの光配分機能が適切に働かないことが理由です。
しかし、インテンシティーは独自のテクノロジーによって、瞳孔径の大きさごとに光配分が適切に機能するように設計されていることから、暗所や夜間でも良好な視界を得ることができます。
最新技術の発信元であるイスラエルで生み出された5焦点眼内レンズのインテンシティーは、独自の技術によって他の眼内レンズにはない特性を持っています。
現在、最も国内でも人気のある多焦点眼内レンズで、当院でも一番お勧めしているレンズです。
しかし、強度近視の方や強度の遠視の方には対応しておりませんので、その際には他のレンズをお勧めしております。
当院では白内障手術に精通し、多種多様な眼内レンズの特性をそれぞれ把握している医師だけでなく、スタッフによる慎重なヒアリングを通じて、患者様のご希望やライフスタイルに合わせた眼内レンズを提案いたします。白内障手術をご検討中の方や術後の見え方をより良くしたい方、眼内レンズ選びにお困りの方はぜひ当院へご相談ください。
Mini WELLとMini WELL PROXAという眼内レンズは、球面収差を利用した独自のレンズ光学構造により、ハロー・グレアといった異常光視症がほとんどないプログレッシブ型の焦点深度拡張型(EDOF)多焦点レンズです。
滑らかな度数移行のため、全距離(遠方から近方45cmまで)において自然で質が高い見え方になります。
メーカー公表値では近方が約40cmまで見える計算となりますが、近方視力がやや弱いとも言われています。その為、近見をより重視し約30cm程度まで見ることができる新しいミニウェル「MiniWELL PROXA(ミニウェル プロクサ)」が発売となりました。
MiniWELL PROXA(ミニウェル プロクサ)は、上図のように、収差を利用した光学構造部分を、従来のミニウェルよりもやや広くかつ強く設置することにより、近方約30cm(下図-3.5D)までの焦点深度の拡張を可能としていますが、近方重視のため遠方から中間距離の視力は、従来のミニウェルよりも若干劣る傾向があります。
そこで、優位眼(利き目)にMiniWELL、非優位眼にMiniWELL PROXAを使用する、「WELL Fusion」というシステムがメーカーより推奨されています。
WELL Fusionシステムでは、苦手な焦点距離を両眼が補い合うことによる両眼加算効果により、下図のように遠方から30cm程度まで連続した良好な視力を得ることが可能となります。
問題点としては、MiniWELL PROXAには乱視用レンズはありませんので、角膜乱視0.75以内の方が向いています。MiniWELL Ready には、乱視モデルの設定があります。
自費診療で使用される様々な眼内レンズには、それぞれ色々な特徴があります。しかし、近くが思ったより見えないという問題が多いのも事実です。
こちらのレンズは、ハロー・グレアがほとんどなく、今回発売されたMiniWELL PROXAの登場により、日本人が特に使用すると思われる30cmの近方が見えるようになったことが、最大の特徴です。
ドイツのALSANZA社が開発したALSAFIT FOURIER(アルサフィット フーリエ)は遠方、中間(75cm)、近方(35cm)の三焦点をもつ回折型レンズです。
このレンズは回折型の3焦点眼内レンズで、レンズの中心部から外側方向に向かって溝が高くなるように設計されているため、瞳孔径(目の大きさ)に左右されることなく、近方に光を集めやすい構造になっています。
光透過率が91.4%と遠・中・近遠距離の全てにおいて、明暗ともにコントラスト感度が良好で質の高いレンズです。
従来の回折型レンズは、シャープエッジのため10~20%の光が反射・散乱しますが、アルサフィットは、回折構造がシンプルな形状に改良されたため、波状の回折パターンと中心から周辺部に向かって溝を高くする逆アポダイズのフーリエ光学部によって、回折型の欠点の夜間ハロー・グレアが少ないです。
レンズ構造から明るさの条件に関係なく、全ての距離で良好なコントラスト感度(見え方の質)を得ることができます。また、色収差が少ないことも特徴です。
色収差とは、レンズで像をつくるときに、レンズ材料の分散が原因で発生する収差で、像の色ズレとしてあらわれることをいいます。
画像下半分が故意に色収差を発生させたもので、右端で顕著な色ずれが生じているのが分かります。
また、乱視矯正用レンズ(トーリックレンズ)も充実しています。強度近視の患者様にも対応することが可能です。また通常よりも強度の乱視、あるいは強度の遠視の患者様にも、特注すれば対応することが出来るのが強みとなっています。
最近人気となっている5焦点レンズINTENSITYは強い近視や遠視には対応していない為、そのような点においてもALSAFIT FOURIERは有用と考えています。
当院では白内障手術に精通し、多種多様な眼内レンズの特性をそれぞれ把握している医師だけでなく、スタッフによる慎重なヒアリングを通じて、患者様のご希望やライフスタイルに合わせた眼内レンズを提案いたします。
白内障手術をご検討中の方や術後の見え方をより良くしたい方、眼内レンズ選びにお困りの方はぜひ当院へご相談ください。
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